「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2017」が2017年10月28日(土)、29日(日)の2日間にわたって開催されました。
今年で6回目となった本フォーラムですが、全国各地から330 名の方々にご参加いただきました。
◆日時: 2017年10月28日(土) 13:30 ~ 17:30(懇親会:17:40 ~ 19:30)
2017年10月29日(日) 9:00 ~ 16:30
◆場所: 東洋大学白山キャンパス(東京都文京区白山 5-28-20)
◆主催: くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会
・実行委員長 :岡村 敏之(東洋大学教授)
・副実行委員長:加藤 博和(名古屋大学教授)
◆共催: (公財)交通エコロジー・モビリティ財団
◆後援: 国土交通省、厚生労働省、(社福)全国社会福祉協議会、東洋大学国際共生社会研究センター、名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター、
(一社)日本民営鉄道協会、(公社)日本バス協会、(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会、(一社)全国個人タクシー協会、(一財)全国福祉輸送サービス協会、
全国交通運輸労働組合総連合、日本私鉄労働組合総連合会、全国自動車交通労働組合連合会、(一社)全国子育てタクシー協会、(特非)市民福祉団体全国協議会、
(特非)DPI 日本会議、(特非)全国移動サービスネットワーク
◆協力: 東洋大学
◆メディアパートナー:(株)東京交通新聞社
(左)東洋大学白山キャンパス (右)満員の会場
【1】「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2017」の開催にあたって
少子高齢化が進む中で、日常の通院や買い物等に困難を抱える人々が全国で増え続けています。この「くらしの足」の問題を解決することを目指して、このフォーラムは皆様のご支援をいただき6回目を迎えました。
今年のフォーラムの副題は、
本年で語り合おう、そして元気な地域をつくろう です。
本フォーラムの特徴は、客席から話を聞くというようなプログラムだけにとどまらず、さまざまなコミュニケーションの場を設定していることです。フラットに/ 敷居は低く/ そして「深く」 を主催者としては目指しています。
このフォーラムには、市民、行政職員、研究者、鉄道・バス・タクシー事業者、福祉・介護・医療の従事者、NPOなど、地域を越え立場を越えて、全国から多くの関係者が集まっています。ぜひ、この「ありそうでない」機会を最大限に活用していただければと願っています。
実行委員長 岡村 敏之(東洋大学国際学部教授)(配布資料より、抜粋)
開会前、関係者全員で資料を準備
【2】開催報告(ダイジェスト)
■第1日目:10月28日(土)
開会、趣旨・進行説明、くらしの足 概論&ディスカッション、
グループディスカッション、懇親会(希望者のみ)
1日目受付風景
◆開会:挨拶 実行委員長 岡村 敏之氏(東洋大学国際学部教授)
(左)(右)「気づきをいただく場にしましょう」と呼びかける岡村 敏之実行委員長(東洋大学国際学部教授)
(中)進行について説明する、全体司会・篠原 俊正氏(実行委員会事務局 監事、(株)ハートフルタクシー副社長)
開会のご挨拶で、「解決策のヒントを持ち帰っていただきたい」と主催者から呼びかけさせていただいた後、松本 年弘氏(国土交通省総合政策局公共交通政策部長)、金指 和彦氏(国土交通省自動車局旅客課長)から「意見交換が活発なフォーラムを開催する意義」等について、お言葉をいただきました。
◆くらしの足 概論&ディスカッシヨン
「大いに語ろう、くらしの足の原点から自動運転まで」
高齢化、人口減が進み、高齢運転者の事故の問題が顕在化するなか、「くらしの足」の原点から、自動運転まで、幅広く議論しました。
◇くらしの足 概論 基調講演:「地域交通と自動運転」
講師:鎌田 実氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」(国交省)の座長を務められた鎌田教授から、超高齢社会の日本について、介護予防や健康寿命、移動の問題などが示されました。そして現状把握、「社会構造の変化と交通」などの説明の後、地域包括ケアシステムの構築や「足の確保」をどうするか、モビリティ整備の目標設定等に触れられました。
また、将来的な自動運転については「無人化のメリットがどれくらい期待できるか」「事業としての成立はこれから」と話されました。
◇ディスカッション
続くディスカッションでは4氏がご登壇。鎌田教授の進行で、「どんな風に困っている人がいるのか」「これまでの制度上で何がネックになっていたか」「今後の展開」について意見交換が行われました。
【登壇者】
・三星 昭宏氏(近畿大学名誉教授)
・大津 太郎氏(秦野市役所都市部公共交通推進課課長代理)
・遠藤 準司氏(実行委員、NPO法人全国移動サービスネットワーク理事)
・佐治 友基氏(SBドライブ(株)代表取締役社長兼CEO)
【コーディネーター】鎌田 実氏(実行委員会顧問、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
(左から)三星氏、大津氏、遠藤氏、佐治氏
三星名誉教授は、生活交通の崩壊と課題について話されたほか、ご参加されている「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」(国交省)や自治体の事例について紹介されました。
大津課長代理は、神奈川県秦野市における交通空白地の解消や、課題を解決することができる職員の育成についてや今後の取り組みについてお話しされました。
遠藤理事は、介護保険制度の動きと移動支援の説明から要介護1、2の利用者向けの総合事業である「移動支援(訪問型サービスD)」を紹介され、住民による住民のための移動支援が重要であると話されました。
ご登壇4人目の佐治氏は、自動運転を事業化する多様な取り組みについて話されました。動画での説明を含めて走行安全と乗客の安全について話されたほか、個人的なエピソードを含めた「福祉」への想いを語られました。その後、全員での討論を経て、鎌田教授がテーマとなった「交通と福祉の連携」の重要性を改めて強く訴えて終了となりました。
◆グループディスカッション
「くらしの足」について、本音で意見交換しよう! という参加型のディスカッションが行われました。28のグループに分かれて、くらしの足に関する悩みや課題を「なんとかしたい!」という熱い想いで共有し、解決のヒントを追求。1グループが8~9人という小人数で、濃く熱い議論をかわしました。
◆懇親会
1日目のプログラムを終えた後、懇親会が開催されました(東洋大学白山キャンパス・食堂)。
この日得たヒントや気づきに興奮冷めやらぬなか、初めての参加者、再会を喜びあう参加者等々でにぎわいました。また多くの来賓、実行委員会メンバーから、ご挨拶の言葉をちょうだいしました。
初の試みである、懇親会での集合写真。親睦の喜びが伝わります。
■第2日目:10月29日(日)
趣旨・進行説明、ショートスピーチ 、基調講演・ディスカッション、
取り組み紹介(ポスターセッション)、白熱討論、閉会
2日目受付風景
◆2日目 開会:挨拶 実行委員長 岡村 敏之氏(東洋大学国際学部教授)
◆ショートスピーチ:松本 年弘氏( 国土交通省総合政策局公共交通政策部長)
ショートスピーチのためご登壇くださった松本 年弘氏(国土交通省総合政策局公共交通政策部長)が、「地域公共交通の活性化及び再生の将来像を考える懇談会」の提言概要についてご説明くださいました。
今後10年を見据えた中長期的な視野から、地域公共交通の活性化・再生の取り組みの方向性を述べられたあと「高齢者の移動手段の確保に関する検討会 中間とりまとめ概要」について話され、「互助」というキーワード等をあげてわかりやすく解説されました。
◆基調講演・ディスカッシヨン 「くらしの足」で地域を「健幸」にする!
まず、副実行委員長である加藤 博和氏(名古屋大学教授)が「いろいろな人たちが行きかうと、地域がいきいき、わくわくする。お出かけは地域を元気にする。QOLが向上して、人口や観光客が増える。乗って楽しい公共交通、降りても楽しい地域づくりを」と話されました。また「高齢化社会における『健康』『幸福』な地域づくりを支える『くらしの足』について考えましょう」と呼びかけ、講師おふたりをご紹介されました。
◇基調講演(1):自然と健幸になれるまちづくりにおける公共交通の重要性
講師:久野 譜也氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)
「公共交通があることで歩く機会を確保できる」と話され、海外の事例紹介を例に出して「公共交通と、車に乗ることのいずれかを選択できる社会」を提案。
また、WHOの「スマートウェルネスシティ=ウォーカブルシティ」の定義等を紹介され、「人の健康」と共に「都市の健康」づくりについて述べられました。
◇基調講演(2)「通称『黄バス』の運行~『くらしの足』で地域を『健幸』に」
講師:水落 優氏(NPO法人くらしサポート越後川口代表理事)
新潟県長岡市川口で運行しているコミュニティバス、「黄バス」について紹介されました。そして、アンケートの結果からルートを変更したり、回数券や定期券を利用する際の“メリット”を意識して価格設定を行う等の柔軟なアイデアや仕掛けを話されました。
◇ディスカッション
続くディスカッションでは、講演された2氏に引き続き登壇いただき、加藤教授のコーディネートのもと討論していただきました。
【登壇者】
・久野 譜也氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)
・水落 優氏(NPO法人くらしサポート越後川口代表理事)
【コーディネーター】加藤 博和氏(副実行委員長、名古屋大学教授)
久野教授、水落氏の講演を受けて、加藤教授がディスカッションを進行しました。
三者は自分の健康・社会の健康と「くらしの足」の関係、「くらしの足」が「健康で」「幸福な」地域づくりにどうつながるかを討論。
“意識づくり”の面からのアプローチが重要であることや、影響力をもつ“インフルエンサー”の育成、若者を公共交通の世界に巻き込むための方法・工夫等を話しあいました。
◆取り組み紹介(ポスターセッシヨン)
◇ポスターセッション・PRタイム
全国各地から地域住民、事業者、研究者、自治体、企業などが活動内容やサービスの紹介を発表するポスターセッション。吉田 樹氏(実行委員、福島大学准教授)の進行のもと、「多くの人に聞いてほしい!」と50団体の願いを込めたPRが続きました。
◇ポスターセッション
「くらしの足」のために日夜がんばっているみんなの活動報告として、50団体から多様な発表が行われました。主なテーマは、「高齢者の移動」(8)「新モビリティ」(8)「オープンデータ」(7)「住民参画」(8)「交通事業者・子ども」(6)「自治体の取り組み」(5)「企業PR」(8)です。(カッコ内はポスター数)
◆白熱討論~「くらしの足の確保の先を見据えて」
「足の確保」だけではない、「健幸」「生活の質」も意織した新たな「くらしの足」の仕掛けは?
さまざまな立場の登壇者が、2日間のフォーラムを振り返って熱く語りあいました。
【討論者】
・岩村 龍一氏(実行委員、(株)コミュニティタクシ一取締役会長)
・若菜 千穂氏(実行委員、NPO法人いわて地域づくり支援センター常務理事)
・伊藤 昌毅氏(実行委員、東京大学精算技術研究所助教)
・寺井 豊氏(京都府建設交通部交通政策課長)
【コーディネーター】
・岡村 敏之氏(実行委員長、東洋大学国際学部教授)
(左から)岩村氏、若菜氏、伊藤氏、寺井氏
コーディネーターの岡村実行委員長からいくつかの論点が出され、公共交通に乗り慣れておくという意識、先進技術と「くらしの足」の関係、公共交通に無関心な層の取り込み等について話しあいました。
岩村氏は事業者の立場からITのコスト面での心配を示し、「開発の段階で手に届きやすいものを作ってほしい」と「技術」についてのお考えを話されました。
若菜氏は地域での活動で実感する住民の感覚や求めるものについて説明、地元の取り組みをご紹介されました。また、「サロン」「こども食堂」などをキーワードとして述べられました。
伊藤氏は「ITで地域の交通を元気にしたい」と話され、情報技術が公共交通オープンデータの流通につながり、ドライバー・利用者それぞれに利点をもたらすと説明されました。
寺井氏は京都府京丹後市の米国Uber(ウーバー)配車システムについてご紹介され、高齢者がスマホをうまく使用できないこと等、いくつかの問題点を明らかにされました。
討論の結びとして、登壇された各人から「果敢に取り組みたい」「地域の人と一つひとつ話しあいたい」という声があがりました。
◆閉会:挨拶 実行委員会顧問 鎌田 実氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
まず、実行委員会事務局長の清水 弘子氏(NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク理事長)から「この会は今まで仲間とつくってきた会です。今後も継続していきたいですし、住民、行政、研究所、事業者、福祉・介護・医療関係者、NPO等が集まるこんな面白い会はないと思います。新たなひろがりをつくっていけたらと思いますので、よろしくお願いいたします」と、挨拶がありました。
次に閉会の締めの言葉として、実行委員会顧問 鎌田 実氏(東京大学教授)から「長きにわたりましてこのような場にお集まりいただき、ありがとうございました。昨年、このように300人規模に成長した会は、今までのような運営方法では開催が難しいのではないかと思いました。けれど若手の方々が委員会に加わってくださり、効率的なシステムなどを取り入れたりして、今年も開催することができました。また来年、お会いしましょう」と会場の参加者の皆様に呼びかけ、拍手をもって閉会となりました。
◆2日間、ご参加いただきありがとうございました。2018年、また会いましょう!
【3】アンケートから(抜粋)
・フォーラムの内容に対して受講料を安く設定しているので、交通費がかかる遠方からも参加できて、NPOの人も参加しやすいと思った。次回も参加したいです。保健福祉分野でも、とても参考になる内容でした。
・とても良いフォーラムなので、さまざまなところから情報が得られると良いです。
・グループディスカッションが思いがけない方向に行って面白かったです。来年も参加したいです。
・以前あった、テーマ別討論を選択できるプログラムが復活するといいなあと思いました。
・交通を利用するための「インターフェイス」のデザインを考えていきたい。
・基調講演の内容がこれまでと異なり、大変勉強になった。白熱討論のIT技術の話が面白かった。今後も公共交通と違う分野から新しい視点で気づきを得られる場になれば、いろいろ考える機会になると思う。
・初めての参加でした。いま話題の自動運転をテーマで学ぶことができた。健康と公共交通のつながりはいままで結びついておらず、新たな視点のきっかけとなった。面白かったです。
・各者の問題意識の相違が大きく、このなかで議論を成り立たせるのは大変だと感じた。もっとも話題を絞るとこぼれるものも出てくるので、現状が良いものだと思う。問題意識は皆さん成熟していると思うので、そこに横軸を通す技術的提案が求められる段階なのかもと思った。日本の現状の地域公共交通は標準化が進んでいないと思う。その点、伊藤 昌毅氏の取り組みには大いに注目している。
(写真撮影:くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会(交通エコロジー・モビリティ財団、せたがや移動ケア))
■当日配布できませんでした佐治友基様(SBドライブ代表取締役社長 兼 CEO)の資料が
以下よりダウンロードできます。
※他の登壇者の資料については配布済。(一部は配布不可のため、ご容赦ください)
ポスターセッションへの多数のお申込み、ありがとうございました。
下記シンポジウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。
トークライブ「鉄道が地域の未来を明るくするために」
■2017年12月11日(月) 18‐20時 (終了後、簡単な交流会を開催)
■名古屋大学東山キャンパス 環境総合館1階 レクチャーホール
出演:田中 輝美 さん ローカル・ジャーナリスト
司会・対談: 加藤 博和 教授 地域公共交通プロデューサー、
名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター
▶申し込み・詳細はこちら↓
終了しました
(一財)地域公共交通総合研究所 第5回シンポジウム
地域のモビリティをどう確保するか?
~ 地方創生に向けた公共交通を含む諸方策の新たな総合的展開 ~
■日 時: 8月9日(水) シンポジウム 13:00~18:10終了 <予定>
懇親会 18:20~20:30散会 <予定>
■テ ー マ : 地域のモビリティをどう確保するか?
~ 地方創生に向けた公共交通を含む諸方策の新たな総合的展開 ~
■場 所: 政策研究大学院大学(〒106-0032 東京都港区六本木7丁目22−1)
シンポジウム/ 想海樓ホール(1階)、懇親会/1階食堂
終了しました
持続可能な暮らしの足を考えるフォーラム(in 岩手、宮城、福島)
日常生活には必要不可欠な“暮らしの足”
「公共交通を少し便利に」「地域福祉でみんなで支えあえないか」
各地で、小さな取り組みが生れつつあります。
“暮らしの足”を支える様々な事例と課題を知り
みんなで “暮らしの足”をどう支えるか考えませんか?
今回、岩手、宮城、福島各県にてフォーラムが開催されます。
◆第1弾は「岩手」(2/12に終了)
◆第2弾は「宮城」(2/19に終了)